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例えば、の話

(2016.4.25)

 

 

例えば、あの深紅に染まった一輪の薔薇は

いつかは枯れて、朽ちていくことを知って

日の光に手をのばすかな

 

明日には雨が降り

雷に打たれ

嵐にのまれることを恐れたり

 

そうして紅を滲ませ

散っていくのか

 

違うんだろう、きっと

 

きっと、何も恐れていない

きっと、何も悲しくはない

 

なぜなら、生きることしか

誇ることしか

愛することしか

 

そうして生きていけたら

どんなにいいだろう

 

 

例えば、古いお城の荒びれた庭に咲いた薔薇は

誰にも見つけられず、その景色が朽ち果てても

この世界は美しいと叫べるだろうか

 

明日にはこの城は燃え果て

何もかもが

灰と散っていく時に

 

グレイに染まる世界を最期に

泣いてしまうかな

 

それでも、もしも

 

空が草木が月光が風が世界が

あなたを愛していると

その声が聞こえたなら

 

 

どんなに、恐れても

どんなに、悲しくても

どんなに、苦しくても

 

 

それでも何も恐れないように

全身に力を入れて

自分の鼓動を聞いて

後ろなんて振り向かないで

 

小さく綻んで

笑ってみせるんじゃないかな

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